プロパンガスの「無償貸与契約」とはガス設備をガス会社が利用者に貸与する契約のことです。これだけ聞くと利用者にとってお得な契約に感じますが、利用者にとってデメリットも存在します。
そこで今回は無償貸与契約の仕組みやメリット・デメリットを解説した上で、無償貸与契約でのよくあるトラブルを紹介します。無償貸与契約について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
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無償貸与契約とは?
無償貸与契約とはガス会社から特定のガス機器を無料で借りることができる契約のことです。ただし、無償貸与契約は必ず結ばなくてはならないものではありません。プロパンガス会社のサービス競争によって生み出された商慣行です。
※商慣行とは:歴史的・伝統的な経緯で自然に発生した取引上の慣習のこと。 明文化されているものもあるが、暗黙の慣習も多いことで問題となる場合もある。
無償貸与契約の仕組み
そもそもプロパンガスを使うためのガス設備は、配管工事費用やガス機器等も含めて20~25万円程度の初期費用がかかります。そこで出てくるのが無償貸与契約です。
契約するプロパンガス会社と無償貸与契約を結ぶことで、プロパンガス会社がガス設備を無料で貸し出してくれるので、初期費用が0円でプロパンガスを利用できるようになります。
無償貸与契約ではガス設備を無料で貸し出すことと引き換えに、契約期間に縛りを設けています。それも数年単位ではなく、10~20年程度で設定されることが多いです。
つまり、無償貸与契約とはガス会社がガス設備を初期費用0円で貸し出しする代わりに、契約期間内は解約しないでくださいね、という契約です。
無償貸与=完全無料ではない
ガス会社を変更せずに使い続けるだけで、ガス設備を準備する費用を負担してくれるならお得じゃん!と思う方もいるかもしれませんが、注意が必要です。無償貸与=完全無料というわけではないからです。
というのも、ガス会社は設備費に相当する費用をガス料金に上乗せして設備費を回収しているからです。無償というよりも一定期間貸し出すリース契約に近い形態だといえます。つまり、毎月ガス設備の費用を分割していると考えるべきです。
そのため、契約期間内に他社に切り替えた場合、契約の残り年数の貸与料金に相当する金額を一括で支払う義務が発生します。
無償貸与契約のメリット・デメリット
続いて、無償貸与契約のメリットやデメリットを紹介します。賃貸物件の大家さんと持ち家の所有者では、メリットやデメリットが異なるので、それぞれ紹介します。
無償貸与契約のメリット
まずは無償貸与契約のメリットを紹介します。
賃貸物件の大家さんのメリット
賃貸物件の大家さんのメリットはプロパンガスのガス設備を実質無料で借りられることです。貸与される設備はガス会社との契約によって異なります。ガス配管や給湯器といったガス供給に直接関係するものだけではなく、エアコンやインターホンなどを貸与する事例もあります。
これらの設備の費用負担がなくなるため、大家さんにとって経済的メリットが大きい契約です。さらに無償貸与契約では設備の貸し出し料金がガス料金に上乗せされますが、実際のガス料金を支払うのは入居者のため、大家さん目線では完全無料でガス設備を借りられることになります。
持ち家の所有者のメリット
持ち家の所有者にとってのメリットはガス設備の初期費用を抑えられることです。
新居を購入した際はその他にも多額の費用がかかるため、少しでも初期費用を安くしたいと考えている方も多いでしょう。そのような方にとっては無償貸与契約は有力な選択肢と言えます。
無償貸与契約のデメリット
次に無償貸与契約のデメリットをそれぞれ紹介します。
賃貸物件の大家さんのデメリット
賃貸物件の大家さんにとってのデメリットは下記の通りです。
- 契約期間内の解約で違約金が発生する
- ガス代が高いという入居者の苦情に対処しなければならない
無償貸与契約は10~20年程度の長期契約となる場合が多いです。その間に契約を解約すると違約金が発生します。中途解約の違約金と設備買取が別々に請求される可能性もありますので、解約する前に契約内容をしっかり確認したほうがよいでしょう。
さらにプロパンガスの無償貸与契約ではガス料金に設備の貸し出し費用が上乗せされる為、入居者のガス料金負担が大きくなります。すると、入居者からガス代が高いという苦情も起きやすくなり、対処をする必要があります。その際に、納得のいく説明ができない場合、入居者が退居してしまう可能性があります。
持ち家の所有者のデメリット
持ち家の所有者にとってのデメリットは下記の通りです。
- 契約期間内の解約で違約金が発生する
- 毎月のガス料金が割高になる
契約期間内の解約で違約金が発生するのは大家さんのデメリットにて先述したので、ここでの解説は割愛します。
持ち家の所有者にとっての最大のデメリットは毎月のガス料金が割高になることです。そもそも割高なプロパンガスの料金に加えて、ガス設備の貸し出し費用が毎月上乗せされるからです。ちなみにガス設備の貸し出し費用を加味しない、東京都のプロパンガス料金と都市ガス料金を比較すると、下記表の通りです。
1カ月のガス使用量 | プロパンガス | 東京ガス(都市ガス) |
10㎥ | 8,048円 | 2,212円 |
20㎥ | 14,157円 | 3,665円 |
これだけでも大きな差額があるにも関わらず、ガス設備の貸し出し費用が上乗せされることで、さらにプロパンガス料金は高くなります。
持ち家の所有者で無償貸与契約を結ぶ際は、毎月のガス料金が割高になることを認識した上で締結するようにしましょう。
無償貸与契約に関するよくあるトラブル
無償貸与契約にはガス設備を準備する初期費用を抑えるメリットがある半面、契約に長期間の縛りがあったり、毎月のガス料金が割高になるというデメリットがあるとわかりました。
無償貸与契約は内容をよく知らずに契約してしまって、後からトラブルが発生しやすい契約です。ここでは無償貸与契約に関するよくあるトラブルを3つ紹介します。
知らないうちに無償貸与契約になっていた
1つ目は、知らないうちに無償貸与契約を結んでいたというトラブルです。こちらは主に持ち家の所有者が経験する可能性が高いトラブルです。
新しく住宅を建てたときのガス契約が無償貸与契約になっていたことに、ガス会社を変更しようとしたときはじめて気が付くといったケースがあります。そのため、ガス会社と契約する際に、契約内容をしっかり確認し、ガス設備の所有権や契約について精査するようにしましょう。
ガス会社変更時に高額な違約金を請求された
2つ目は、ガス会社変更時に請求される高額な違約金でのトラブルです。大家さんや持ち家の所有者がガス会社を変更した際に、無償貸与契約の契約期間中だった為、高額な違約金を請求されたというケースがよくあります。
契約内容が違法でない限り、契約を締結している以上、違約金は支払わなければなりません。ガス会社の契約を変更する際は、事前に契約内容を再確認し、違約金や設備の買取費用の支払いについて理解しておくようにしましょう。
また契約変更先のガス会社によっては、無償貸与契約により発生する違約金を負担してくれる場合があります。違約金を負担してくれるガス会社を探して、契約を変更することも一つの手段と言えるでしょう。
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経済産業省によるプロパンガス料金制度の見直し
2023年7月、経済産業省はプロパンガスの不透明な料金請求を是正することを目的に料金制度の見直しを発表しました。特筆すべきは、ガス供給と無関係なエアコンなどの設備をガス料金に上乗せすることを禁止すると発表したことです。違反した場合の罰則も設ける予定で、料金の内訳明示も義務化されます。2024年春に省令を改正し、2027年度からの施行を目指しています。
経済産業省が新たなルールを導入すると表明していることから、おそらく行き過ぎた無償貸与は行われなくなっていくでしょう。
そして今後は無償貸与の有無ではなく、料金やサービスの内容でガス会社を選ぶ時代がくるのではないでしょうか?お客様のことを考えたガス会社のみが契約者を増やしていく、そんな世界が訪れることに期待したいですね。
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